皆さんは、健康診断を受けていますか?
2021年の厚生労働省「労働安全衛生調査」によると、過去1年間に勤め先等が実施した健康診断(一般健康診断)を受けたことがある人は、73.2%でした。
10人のうち7人が受けている健康診断ですが、皆さんは健康診断の結果って見ていますか?
「見てもよくわからない」
「いつも同じことが書いてあるから見ても仕方ない」
「すでに病院にかかっているから大丈夫」
などの理由で、チラッと見てしまい込む、という方も少なくないのではないでしょうか。
実は、健康診断を受けた人の中で、異常が見つかった人は40.1%でした。5人に2人が何らかの異常を指摘されているということなのです。
健康診断の結果には、自分の今の体調を知る重要なヒントがたくさん詰まっています。異常があるかないかの他に、異常があったらどうしたらいいのかも書いてありますので、ぜひ活用しましょう。
では、実際の健康診断の結果の見方について説明しましょう。
健康診断の結果は、基準値(基準範囲)をふまえて何段階かに分けられ、アルファベットで表示されます。結果の判定区分は施設によって異なりますが、当院では日本人間ドック学会の判定区分を使用していますので、ここではこれを例に挙げます。
当院の判定区分は以下の5段階に分けられます。
A | 異常なし *(異常所見はありません。) |
B | 軽度異常 *(軽度異常がみられますので、定期健診で経過をみてください。) |
C | 要再検査・生活改善 *(生活改善を行い、1年以内に再検査を受けてください。) |
D | 要精密検査・治療 *(精密検査・治療が望ましい。医師の診察を受けてください。) |
E | 治療中 *(治療管理を継続してください。) |
*(カッコ)のコメントは、当院の健康診断結果報告書の【判定説明】の表記内容になります。
ここでいう「異常」とは、一定の基準値から外れる数値や所見のことです。
Aは文字通り「異常なし」、Bは「基準範囲から少しはずれているが、健康上問題のない状態であったり、再検査などの必要はないと判断される状態」という意味になります。
いずれも病院に行く必要はありませんが、ここで安心せず、健康診断はぜひ続けてくださいね。
特に大事なのはCとDです
Cは「再検査が必要な状態」です。
しかも、1年以内に再検査が必要な異常です。
健康診断を受けた病院に行っても良いですし、別の病院に行ってもかまいません。再検査の時期は、「総合診断」などの医師の見解が記載された欄に書かれていますので、Cを見たらいつ病院に行けばいいのか、コメントを確認してください。
Dは「精密検査や治療が必要な状態」です。
結果を受け取ったら、速やかに病院に行ってください。
Eは「現在治療を受けている項目」について記されています。
引き続き治療を続けてください。ただし、健康診断で経過をみてください、と言われている異常についてはEにはなりません。
そして、結果の判定区分に対する総合的な所見は、「総合所見」、「総合判定コメント」などの欄を見てください。当院では「総合診断および今後の方針」欄に記載しています。
再検査時期の指示や、疑われる病気、日常生活で気を付ける点などのアドバイスが書かれていますので、ぜひ目を通してください。
ここまで健康診断結果の判定についてお話してきましたが、健康診断の基準範囲と、精密検査や治療で受診した時の検査の基準値(臨床判断値と言います)が異なっていることをご存知ですか?
臨床判断値の基準は、特定の病気にかかっているかいないか、治療が必要か、あるいは治療がうまくいっているかを判断するために設定されています。
一方、健康診断には、病気の早期発見の他に、病気になる前から予防に取り組んでもらうという重要な目的があります。そこで、単に異常の有無を通知するだけではなく、異常とまでは言えないけれど、予防的対策をお勧めする、という段階から、至急医療機関を受診することが望ましいような状態までをお知らせできるように基準範囲が設定されました。
例えば糖尿病の場合、病院の検査では、空腹時血糖値110mg/dl以上が異常と指摘されますが、健康診断の場合は、空腹時血糖値99mg/dl以下が正常域、100~109mg/dlは正常高値と判断されます。
この正常高値の範囲が、「異常とまではいえないけれど、予防的対策をお勧めする」に当たります。病気として診断される前に、自分の体調の変化に気付き、生活習慣の見直しを行って、病気を防いでいただきたい、という私たちからのメッセージです。
さて、健康診断の結果の見方や活用の仕方についてわかっていただけたでしょうか。今後、健康診断を受けたら判定や医師からのコメントなどを参考にして、ご自分の健康維持、増進に役立ててくださいね!